Пройди свой путь

Эпидемия(Epidemia)中心のロシア語曲翻訳ブログです。

Эпидемия(Epidemia)エルフの手記5/11 エルフの血/Кровь Эльфов

ロシアのパワーメタルバンド、
Эпидемия(Epidemia、エピデミア、エピジェーミヤ)の
メタルオペラシリーズを訳していきます。


2004年のシリーズ第1作、
「エルフの手記(Эльфийская рукопись, Elven Manuscript)」の5曲目、
「エルフの血(Кровь Эльфов)」です。
こちらの映像は2007年の再演版なのですが、
2004年の初演でもアラティエリちゃんいじめはありましたので、
そこはどうしても欠かしたくない演出らしいです。なんでだ。


エルフの血(Кровь Эльфов)


 デイモスはアラティエリ王女に語り聞かせた。デイモスの国に何が起こり、彼が何故エニヤを侵略せねばならなかったのか。デイモスの治める星は不毛の惑星と化した。大地を暖めていた太陽の火が消え、広大な領土はあまねく氷に覆われ、終わりのない夜が訪れたのだ。残された道はたったふたつだ。星もろとも滅びるか、もしくは新たな居住地を探すか。強大な魔術師であり、しばしば別の世界を旅していたデイモスは、彼の治める地の民が移住するのにふさわしい場所を見つけた。それがエニヤだったのである。
 非常に難解な呪文の力を借りて、デイモスはふたつの世界をつなぐ門を短時間開き、自軍の前衛をエニヤに送り込んだ。エルフの玉座の間にて彼は貴重な宝玉を見つけた。エリ・ギレートという名のその宝玉は、人間の頭部ほどの大きさで、内側から緑がかった光を発していた。エリ・ギレートを調べたデイモスは、これこそがエルフの国を囲む障壁を維持しているのだと突き止めた。
 デイモスが宝玉の作用に手を加えた結果、障壁は光を通さなくなり、エニヤは闇に包まれた。そればかりではない。宝玉には闇の君主を夢中にさせるだけの性質が備わっていた。エリ・ギレートは、デイモスが自軍をあまさずエニヤに送り込むのに事足りるあいだ、ふたつの世界をつなぐ門を開き続けられるだけの強大な魔力の源となり得たのだ。そうすればエニヤだけでなくこちら側の世界のすべてを支配することも可能である。だがそのためには恐ろしい儀式を遂行する必要があった。エルフの血をエリ・ギレートに注ぐのだ。そしてその儀式はいつでも執り行えるものではなく、空のある一点に光が射す<融合の夜>に限られていた。
 それらの事情をアラティエリに打ち明けた上でデイモスは、彼女が自分の妻となりエニヤの王位を正式に譲り渡すのであれば生贄にはしない、と伝えた。だがアラティエリは侵略者の提案を頑なに拒んだ。拒否すれば殺すと宣告されようとも、誇り高い王女は背信よりも死を選んだのである。
 時を同じくしてデズモンドとトルヴァリドは、敵に気取られぬままエニヤの国境まで辿り着かんとしていた。


Epidemia - エルフの血
Эпидемия - Кровь эльфов


Эпидемия - Кровь Эльфов (エピジェーミヤ/エルフの手記05.エルフの血)


デイモス:
私の世界は闇に沈んだ
死に絶えた風景と冷たい濃霧
心ならずもお前の仇となったが
私としても好ましくない役どころなのだ

私の求婚を受け入れよ
お前に対する情熱が声高く叫ぶ
どう答えようがお前は私を殺せない
自ら死を招くだけだ!

ドラゴン:
世界は変わっていく
命は終わりつつある
お前の命運は尽きた
お前の国もだ!
選択肢はない
宝玉エリ・ギレートが
闇と氷の世界に通じる
道を開くのだ!

デズモンド:
融合の夜にデイモスは
エルフの血を宝玉に注ぐ
悪を 嫉妬を 恐怖と欺瞞を従えて
奴はこの世界にやってきた

デイモス:
お前達の世界は私のものだ
門の鍵は私の手中にある!
お前達に永久の安らぎを与えよう!

デイモス:
お前の魂は何を期待するのか?
デズモンドは間に合うまい
私の住まいがあった世界の灯りは消えたが
お前達の暖かい国が私の民を庇護してくれよう

お前に秘密を明かしてやろう
融合の夜に宝玉は
エルフの血でもって染められる
そして世界をつなぐ扉が開かれる

ドラゴン:
世界は変わっていく
命は終わりつつある
お前の命運は尽きた
お前の国もだ!
選択肢はない
宝玉エリ・ギレートが
闇と氷の世界に通じる
道を開くのだ!

デズモンド:
融合の夜にデイモスは
エルフの血を宝玉に注ぐ
悪を 嫉妬を 恐怖と欺瞞を従えて
奴はこの世界にやってきた

デイモス:
お前達の世界は私のものだ
門の鍵は私の手中にある!
お前達に永久の安らぎを与えよう!

アラティエリ:
残忍な狂人よ
思い上がるのはやめて
お前は世界を支配できない
呪われてしまえ 闇の予言者め
死んだほうがましだわ いっそ救われる
女奴隷になるくらいなら
私の決意を思い知りなさい
答えは「永久に消え失せろ!」よ


ドラゴン:
世界は変わっていく
命は終わりつつある
お前の命運は尽きた
お前の国もだ!
選択肢はない
宝玉エリ・ギレートが
闇と氷の世界に通じる
道を開くのだ!

デズモンド:
融合の夜にデイモスは
エルフの血を魔除けに注ぐ
悪を 嫉妬を 恐怖と欺瞞を従えて
奴はこの世界にやってきた

融合の夜にデイモスは
エルフの血を魔除けに注ぐ
悪を 嫉妬を 恐怖と欺瞞を従えて
奴はこの世界にやってきた

デイモス:
お前達の世界は私のものだ
門の鍵は私の手中にある!
お前達に永久の安らぎを与えよう!


Deimos:
Мой мир погузился во мрак -
Мёртвый ландшафт и холодная мгла.
И я поневоле твой враг
И эта роль мне, поверь, не мила!

Прими предложение моё
Страсть к тебе громко во мне говорит.
Меня твой ответ не убьет,
А тебя к смерти приговорит!

Dragon:
Мир меняется,
Жизнь кончается
Ты обречена
И твоя страна!
Вариантов нет
Сфера Эль-Гилэт
В мир, где тьма и лёд
Приоткроет вход!

Dezmond:
Кровь Эльфов на талисман
В Ночь Совмещения Деймос прольёт.
Зло, зависть, страх и обман
Он за собой в этот мир принесёт.

Deimos:
Ваш мир - он мой
Ключ от него у меня под рукой!
Я обеспечу вам вечный покой!

Deimos:
На что уповает твой дух?
Дезмонд тебя не успеет спасти.
Там, где мой дом - свет потух
Ваш тёплый край мой народ приютит.

Тебе я открою секрет:
В ночь Совмещения эльфийская кровь
Должна обагрить амулет
И распахнутся двери миров.

Dragon:
Мир меняется,
Жизнь кончается
Ты обречена
И твоя страна!
Вариантов нет
Сфера Эль-Гилэт
В мир, где тьма и лёд
Приоткроет вход!

Dezmond:
Кровь Эльфов на талисман
В Ночь Совмещения Деймос прольёт.
Зло, зависть, страх и обман
Он за собой в этот мир принесёт.

Deimos:
Ваш мир - он мой
Ключ от него у меня под рукой!
Я обеспечу вам вечный покой!

Alatiel:
Ты безумен и жесток,
Но кончается твой срок,
Ты не будешь править миром
Будь ты проклят, Тьмы пророк.
Лучше смерть, как избавление,
Чем быть первой средь рабынь.
Знаешь ты моё решение-
Мой ответ: <Навеки сгинь!>

соло Илья Князев

Dragon:
Мир меняется,
Жизнь кончается
Ты обречена
И твоя страна!
Вариантов нет
Сфера Эль-Гилэт
В мир, где тьма и лёд
Приоткроет вход!

Dezmond:
Кровь Эльфов на талисман
В Ночь Совмещения Деймос прольёт.
Зло, зависть, страх и обман
Он за собой в этот мир принесёт.

Кровь Эльфов на талисман
В Ночь Совмещения Деймос прольёт.
Зло, зависть, страх и обман
Он за собой в этот мир принесёт.

Deimos:
Ваш мир - он мой
Ключ от него у меня под рукой!
Я обеспечу вам вечный покой!

Эпидемия(Epidemia)エルフの手記4/11 己の道を行け/Пройди Свой путь

ロシアのパワーメタルバンド、
Эпидемия(Epidemia、エピデミア、エピジェーミヤ)の
メタルオペラシリーズを訳していきます。


2004年のシリーズ第1作、
「エルフの手記(Эльфийская рукопись, Elven Manuscript)」の4曲目、
「己の道を行け(Пройди Свой путь」です。
これもデズモンドとトルヴァリドのデュエット。旅の途中。
旅の途中なのでデズモンドくんの衣装にマントのような何かが追加されています。
モブよりも主演メンバーの衣装をもうちょっと……と思わなくもない。


私事ですが、エピジェーミヤ来日のEvoken Fest 2019で
自分が参戦できた9月1日日曜日の1曲目がこの曲でした。
このタイミングで新ブログ作るならやっぱエピジェさんの曲名かな~、と
ぼんやり考えてはいたんですが、
この曲が始まった瞬間にブログ名即決しましたね。己の道を行け。

 gravetreeru.hatenablog.com

 

 

己の道を行け(Пройди Свой путь)

 潜んでいるかも知れない敵軍のスパイに気取られないよう、彼らは夜間にのみ旅を進めていた。それとほぼ同じ頃、敵軍の隊長であるデイモスは殺された王の玉座に座っていた。玉座の間の床はドラゴンの巨大な体に占領され、その前には兵士に囲まれたアラティエリ王女が立っていた。


Epidemia - 己の道を行け
Эпидемия - Пройди Свой Путь


Эпидемия - Пройди Свой Путь(エピジェーミヤ/エルフの手記04.己の道を行け)


デズモンド:
月の光と
冷たい星のきらめきが
俺達に道を指し示す
皮袋のエールと
瞬く光に彩られた森が
束の間の安らぎを与える

これが俺達の運命だ
うつつと夢が混ざり合う
敵の目から
森が隠してくれる
俺達の姿と言葉の残響を!

デズモンド&トルヴァリト:
己の道を行け!
ただ一筋きり 外れることはできない
何故 そしてどこへ向かうのかわからなくても
己の道を行け!
引き返すことはもはやできない
まだわからない 行き着く先で
一体何が見つかるのか!

デズモンド:
戦争の影と
俺を突き放した国の痛みが
俺達を急き立てる
山からの風と
凍りついた湖の冷気が
俺達をより苦しめる

これが俺達の運命だ
うつつと夢が混ざり合う
敵の目から
森が隠してくれる
俺達と言葉の残響を!

デズモンド&トルヴァリト:
己の道を行け!
ただ一筋きり 外れることはできない
何故 そしてどこへ向かうのかわからなくても
己の道を行け!
引き返すことはもはやできない
まだわからない 行き着く先で
一体何が見つかるのか!


Dezmond:
Лунный свет
И холодный блеск планет
Нам указывают путь.
Эль в мехах
Лес в мерцающих огнях
Нам дают передохнуть.

Мы обречены -
Смешались реалии и сны.
От вражеских глаз
Леса скроют нас
И отзвуки фраз!

Dezmond&Torvald:
Пройди свой путь!
Он ведь один и с него не свернуть,
Пусть не знаешь зачем, и не знаешь куда Ты идёшь.
Пройди свой путь!
Ты не сумеешь назад всё вернуть,
И не знаешь пока, что в конце тупика
Ты найдёшь!

Dezmond:
Тень Войны,
Боль моей чужой страны
Нам промедлить не дадут.
Ветер с гор,
Свежесть ледяных озёр
Нам усилий придадут.

Мы обречены...

Dezmond&Torvald:
Пройди свой путь!

соло Juron

Dezmond&Torvald:
Пройди свой путь!

Эпидемия(Epidemia)エルフの手記3/11 戦うために生まれし者/Рождённый Для Битвы

ロシアのパワーメタルバンド、
Эпидемия(Epidemia、エピデミア、エピジェーミヤ)の
メタルオペラシリーズを訳していきます。

2004年のシリーズ第1作、
「エルフの手記(Эльфийская рукопись, Elven Manuscript)」の3曲目、
「戦うために生まれし者(Рождённый Для Битвы)」です。
ところで私はトルヴァリドが好きです。

余談なんですが
「артефакт(artefact、アーティファクト)」を
どう訳せばいいのかずっと悩んでいます。
ファンタジー用語はよくわからない……とりあえず「人工遺物」で。

 

 

戦うために生まれし者(Рождённый Для Битвы)

 おそらく生きては帰れまい。あらかじめ忠告した上で、デズモンドはトルヴァリド自身に選択を委ねた。しかし真の戦士であるトルヴァリドが怯むはずもなかった。デズモンドの忠実な友として、トルヴァリドは一瞬たりとも迷いを見せなかった。
 彼らが連れ立って旅立とうとする直前、デズモンドはイルディスからの便りを受け取った。エニヤを取り巻く山脈のどこかに、何かしらの強力な人工遺物、あるいは力の源泉が潜んでいるということだった。


Эпидемия - Рождённый Для Битвы
Epidemia - 戦うために生まれし者


Эпидемия - Рождённый Для Битвы(エピジェーミヤ/エルフの手記03.戦うために生まれし者)


デスモンド:
俺はどうすればいい ひとりで敵に立ち向かうのか
どこに向かいどう振る舞えばいい?
敵地で俺は笑われるだけだろう
俺の勝機は十にひとつだ

友よ 俺を責めないでくれ
お前を連れていきたいんだ
だけども死へと至る旅路となるだろう
自分で決断してほしい

トルヴァリド:
お前のためなら幾たびでも
この剣でもって仕えよう
岩も氷も打ち砕いてみせる
荒れ狂う竜巻のごとく
闇の砦を破壊しよう
ただ「行け」とだけ言ってくれればいい!

デズモンド:
死の亡霊を 悪の創造物を
顔のないデイモスが奈落から呼び起こした
厚い灰が俺たちの世界を覆っている
貴金属を錆が食らおうとしている

剣を取ってくれ 俺の恐怖をなぎ払うんだ
神は俺達を必要としていない!
運命の手中で踊らされるなんて
俺もお前もまっぴらごめんだ!

トルヴァリド:
お前のためなら幾たびでも…


トルヴァリド:
デズモンド 俺の友よ 覚悟はできている
戦うためにこそ俺は生まれたのだ
恐怖とは弱さにすぎず
怯めばすなわち負けたも同じだ

イルディス:
そう もはや恐怖は心に立ち入るまい
信頼の光が消えることはない
不死の魂が息づく山脈で
力を見いだすのだ!

トルヴァリド:
お前のためなら幾たびでも…


Dezmond:
Что же мне делать – один против всех
Как поступить и куда мне идти?
Я у врага только вызову смех
Шансы мои – один к десяти.

Тебя, мой друг, не обессудь
Хочу с собой я взять,
Но может стать смертельным путь
Ты должен сам решать.

Torvald:
Для тебя мой меч
Не раз ещё послужит,
Он сокрушит скалы и лёд.
Словно дикий смерч
Тьмы оплот разрушит,
Только скажи слово «Вперёд» !

Dezmond:
Призраков смерти, создания зла
Деймос Безликий из бездны призвал.
Мир наш накроет густая зола,
Ржавчина съест благородный метал.


Возьми свой меч, развей мой страх –
Мы не нужны богам!
Игрушкой у судьбы в руках
Быть не пристало нам!

Torvald:
Для тебя мой меч...

Torvald:
Дезмонд, мой друг, я готов ко всему, -
Только для битвы я был рождён.
Страх – это слабость и потому:
Кто испугался, – уже побеждён.

Irdis:
Да не проникнет в сердце страх –
Луч веры не потух.
Найдёте силу вы в горах,
Где жив бессмертный дух!

Torvald:
Для тебя мой меч...

Эпидемия(Epidemia)エルフの手記2/11 試練の時/Час испытания

ロシアのパワーメタルバンド、
Эпидемия(Epidemia、エピデミア、エピジェーミヤ)の
メタルオペラシリーズを訳していきます。

2004年のシリーズ第1作、
「エルフの手記(Эльфийская рукопись, Elven Manuscript)」の2曲目、
「試練の時(Час испытания)」です。

何でもこの曲はアルバムリリース直後に日本のラジオ番組で紹介されたそうで、
もしかしたら日本で一番有名なエピジェーミヤ曲かも知れません。
ちなみにこのアルバム曲には日本語字幕付き動画(2007年再演Ver.)があります。


前史が終わって本編のシナリオが始まります。
エルフの国エニヤを追放されたハーフエルフのデズモンドくんのその後と、
人間の戦士トルヴァリドとの出会いについて。

今作の主人公であるハーフエルフのデズモンドは、
ドラゴンランス」のハーフエルフの戦士タニスと、
異例の若さで<大審問>をパスした魔術師レイストリンを
足して二で割ったような設定です。
この曲の歌詞を初めて解読した時は、
レイストリンが受けた<大審問>なのかと思ったんですが、
魔法アカデミーの卒業試験のことでしょう。
しかし「試験の日」と訳しちゃうとそこだけ一気にゆるくなるので
あえて直訳のまま「試練の時」にしました。

歌詞に登場する「スターム(Стурм)」は
やはり「ドラゴンランス」に登場する人間の騎士スタームのことです。

フェスでやる可能性が高い曲だったのでカタカナルビも書き出してあります。
ひらがなのら行は巻き舌です。歌えるはずなので歌ってください。

 


物語

 エニヤから追放されたデズモンドだったが、だからと言って魔法学の習得を断念したくはなかったし、イルディスからも人間国の魔法アカデミーで勉学を続けるよう勧められていた。新米の魔法使いのデズモンドは、年老いた師たるイルディスの提案を受け入れて、五年のあいだ人間国で魔力の向上と高等魔術の習得に励んだ。ちょうどその頃に隣国との戦争が勃発し、デズモンドは学んできた知識を実践で生かすこととなった。
 戦場にてデズモンドは勇ましく敵軍に立ち向かい、敵の陣営の魔法使い達が発動せんとした破滅の呪文を打ち消した。己の危険すら顧みなかった。その戦でデズモンドは、とある人間の戦士の命を救った。彼の名はトルヴァリドという。 
 自分が命を救われたのだと知ったトルヴァリドは、戦地におけるデズモンドの行動を大いに讃えた。彼は戦が終わるとハーフエルフを訪ねていき、心からの友情を誓った。人間の友人などひとりもいなかったデズモンドは喜んだ。人間にとって混血のハーフエルフとは、ただでさえ不審で距離を置きたい存在であり、おまけに魔法使いとあれば尚更だったのだ。
 デズモンドは人間国の魔法アカデミーで勉学に五年を費やし、魔法使いの資格及び魔法の杖の習得、高等魔法を執り行う権利を得るための試練の時が遂に訪れた。ずっと待ちわびていた時だった。準備も万端だったのだが、試練の日前夜は神経がひどく高ぶってしまい、とても寝付けなかった。

試練の時(Час Испытания)

 朝が来て、ハーフエルフは魔法アカデミーを取り囲む森のそばの家を出た。雄大な古い木々のあいだの小道を歩いていたら何かが聞こえた。うめき声かも知れないその音に驚いて、茂みに踏み入り物音の方向に注意深く近づいていったデズモンドを待ち受けていたのは、木にもたれて座り込む血まみれのエルフだった。恐怖で竦み上がりながらもデズモンドは、それが自分の初めての師であった宮廷付きの魔法使いイルディスその人だと認めた。
 イルディスはどうにか目を開けると、途切れがちな小さな声で、苦痛と嘆きに満ちた物語を始めた。
 エニヤは史上初めて敵に占領された。いや、魔法の丸天井は相変わらず外部の者を通さなかったし、守りの固い峡谷の本道を突破しようとする者もいなかった。真夜中に音もなく、前触れもなく、敵は宮殿近くに突然現れたのだ。
 悪魔を彷彿とさせる集団は、寝惚けていたために何が起こったのか理解する間もなかった守衛達を始末すると、怒号を上げて宮殿に押し入った。周辺の建物はすでに地獄の業火に包まれていて、まだ命のあるエルフの民の悲鳴が至るところから響き渡っていた。その光景の上を、生ける者すべてに恐怖をもたらしながら、巨大な亡霊にも似た翼のある怪物が旋回していた。夜空を背にしてもそのシルエットはなお黒く、あらゆる光を呑み込んでしまうかのようであった。ドラゴンだ。怪物が宮殿のバルコニーに舞い降りると、その背から黒光りする鎧に全身を包んだ男が降り立った。エルフの王は剣を構えてその者に立ち向かった。
 決闘は長くは続かなかった。エルフの王は悪魔の武器に体を貫かれ、殺人者を呪いながら倒れていった。主を救おうとしたイルディスも、黒い騎士の部下に攻撃されて深手を負った。彼に残された道はただひとつ、魔法を用いてテレポーテーションすることだけだった。イルディスは到着地点としてデズモンドを選択し、そのせいで魔法アカデミーの近くに現れたのである。宮殿を離れる前に彼が見たのは、闇の兵士に捕らわれたアラティエリ王女の姿だった。
 イルディスはかつての弟子に、連絡を可能にする魔法のクリスタルを与えた。デズモンドはアカデミーの魔法使い達にイルディスの治療を委ね、この先自分がどうするべきなのか深く思い悩んだ。追放された身ではあれど、故郷を捨て去ることはできない。自分を追放したエルフの王は死んだが、王の娘であるアラティエリは捕虜となりまだ生きている。デズモンドが愛し、いつの日か再び巡り会い共にあれたなら、と望まずにいられなかった女性だ。選択肢はひとつしかなかった。
 最終決断を下してしまうと、他にするべきことはエニヤに行って敵を打ち負かすという「たったそれだけ」であった。イルディスの口から直接話を聞いたデズモンドは、侵略者の力は強大であると正しく理解していた。自分ひとりで勝利を収められる可能性などゼロに等しい。おまけにエニヤまでの道のりは遠かった。デズモンドがまず向かったのは、親友のトルヴァリドのもとだった。戦士の力を借りたかった。


Эпидемия - Час Испытания
Epidemia - 試練の時


Эпидемия - Час Испытания(エピジェーミヤ/エルフの手記02.試練の時)

 

デズモンド:
ついに訪れた
試練の時が
ああ 俺は疲れ果てた
ずっと待ちわびていた

秘められた目的に達するまでの
道のりは遠かった
闇に包まれし
白魔術の真髄

あの音は何だ 苦痛を孕んだ呻き声
微かな声 まるでクリスタルの音のよう
かろうじて命の火が灯っている
俺には言葉が聴こえる:

イルディス:
敵が我らの家を踏みにじる
大地は苦悶の呻きを上げて
玉座には殺人者が座る
悪の現身なのだ
戦争は間近だ
ああ 我々は神ではない
背後に道はなく
行く手には霧が広がる!

デズモンド:
戦争の幻影が
エニヤを包囲する
闇の手中には
俺が愛した彼女

俺は聖人じゃない
闇の砦を打ち破ろうにも
俺は英雄じゃない
スタームでもランスロットでもないんだ

選択肢はひとつだ 今や俺に託された
迷いはすべて背後に置き捨てた
俺は異端者 向かうべき道などない
だが災いこそがチャンスを与えてくれる!

デズモンド:
敵が我らの家を踏みにじる
大地は苦悶の呻きを上げて
玉座には殺人者が座っている
悪の現身なのだ
戦争は間近だ
ああ 我々は神ではない
背後に道はなく
行く手には霧が広がる!


デズモンド:
選択肢はひとつだ 今や俺に託された
迷いはすべて背後に置き捨てた
俺は異端者 向かうべき道などない
だが厄災こそがチャンスを与えてくれる!

イルディス:
敵が我々の家を踏みにじる
大地は苦悶の呻きを上げて
玉座には殺人者が座る
悪の現身なのだ
デズモンド:
戦争は間近だ
ああ 我々は神ではない
背後に道はなく
行く手には霧が広がる!

 


ヴォート・イ・ナスタール
チャース・イスプィターニヤ
オー、カーク・ヤー・ウスタール
アッアジダーニヤ

ドーラク・ブィル・プーチ
(ク)ツェーリ・ザヴェートナイ
チョームナヤ・スーチ
マーギイ・スヴェートライ

シトー・ザズヴーキ、ポールヌィイ・ボーリ・ストーン
ゴーラス・チーヒイ、カーク・フるスターリヌィイ・ズヴォーン
ジーズニ・(ヴ)ニョーム・チェープリッツァ・イドヴァー・イドヴァー
イ・ヤー・スルィーシュ・スラヴァー

(繰り返し)
ヴらギー・(ヴ)ナーシェム・ドームェ
ジムリャー・(ヴ)ムーカフ・ストーニェト
ウビーツァ・ナトろーニェ
オーン・ズロー・ヴァプラチー
ヴァイナー・ナパろーギェ
ウヴィー、ムィー・ニェ・ボーギ
ナザート・ニェート・ダろーギ
トゥマーン・フピェりヂー!

プリーズらク・ヴァイヌィー
エーニユ・アフヴァチール
(ヴ)ラーパフ・ウチムィー
ター・カヴォー・ヤー・リュビール

ヤー・ニェ・スヴィトーイ
シトープ・スヴェるヌーチ・チムィー・アプロート
ヤー・ニェ・ギろーイ
ストゥーるム・イーリ・ランスィロート

(繰り返し)
ヴィーバる・ヤーシェン - オーン・チピェーり・ザムノーイ
フスェー・サムニェーニヤ・ザマイェーイ・スピノーイ
ヤー・イズゴーイ - プーチ・ムニェー・ニェート・トゥダー
ノー・ダヨート・シャーンス・ビダー!


Час испытания


Dezmond:
Вот и настал
Час испытания.
О, как я устал
От ожидания.

Долог был путь
К цели заветной
Тёмная суть
Магии светлой.

Что за звуки, полный боли стон
Голос тихий, как хрустальный звон,
Жизнь в нём теплится едва-едва
И я слышу слова:

Irdis:
Враги в нашем доме
Земля в муках стонет
Убийца на троне –
Он зло во плоти.
Война на пороге,
Увы, мы не боги,
Назад нет дороги-
Туман впереди!

Dezmond:
Призрак Войны
Энию охватил
В лапах у тьмы
Та, кого я любил.

Я не святой,
Чтоб свергнуть тьмы оплот,
Я не герой -
Стурм или Ланселот.

Выбор ясен – он теперь за мной,
Все сомнения за моей спиной.
Я изгой – пути мне нет туда,
Но даёт шанс беда!

Dezmond:
Враги в нашем доме
Земля в муках стонет
Убийца на троне –
Он зло во плоти.
Война на пороге,
Увы, мы не боги,
Назад нет дороги-
Туман впереди!

cоло Bush/Juron

Dezmond:
Выбор ясен – он теперь за мной,
Все сомнения за моей спиной.
Я изгой – пути мне нет туда,
Но даёт шанс беда!

Irdis:
Враги в нашем доме
Земля в муках стонет
Убийца на троне –
Он зло во плоти.
Dezmond:
Война на пороге,
Увы, мы не боги,
Назад нет дороги-
Туман впереди!

Эпидемия(Epidemia)エルフの手記1/11 黄金の竜(インストゥルメンタル)/Золотые драконы (instrumental)

ロシアのパワーメタルバンド、
Эпидемия(Epidemia、エピデミア、エピジェーミヤ)の
メタルオペラシリーズを訳していきます。

まずは1作目、
「エルフの手記(Эльфийская рукопись, Elven Manuscript)」のオープニング、
「黄金の竜(Золотые драконы)」です。インストゥルメンタル


Эпидемия - Золотые драконы(エピジェーミヤ/エルフの手記01.黄金の竜)


シナリオ
前史

 この広大で限りない宇宙のどこか遠く、ひっそりと取り残された世界に、エルフと呼ばれる種族の住まう国があった。その国の名はエニヤといい、北の海へと続く絵画のような常緑の平原に位置しており、南側には登頂不可能な山脈と氷に覆われた絶壁がそびえ立っていた。そうした天然の障壁のみならず、魔法の力も加わることによって王国の守備はより強固なものとなっていた。目に見えない丸天井がエニヤを取り囲み、美しい国に侵入せんと企むあらゆる異種を阻んで、外部の目に触れさせなかったのである。
 エニヤに通じる道は、険しい崖に挟まれた峡谷の底の本道のみだった。魔法の障壁の力もその通路までは届かなかったが、エルフの射手が余所者の目を避けて山陰に潜み、望まれぬ客を常に警戒していた。もしも他国の軍の侵攻に脅かされ、かつ打ち損じのないエルフの矢でもってしても撃退できない場合は、巨大な岩を転がして敵軍の前衛を一挙に埋葬し、それと同時に生存者の行く手を塞いでしまえた。
 エルフという保守的な種族はほぼ不死といってもよく、王が終生(数百年間)国を治めたのちに、王の息子がその跡を継ぐのがならわしだった。自分達を選ばれた種族とみなし、他種族に傲慢な態度を取るエルフは、人間であれノームであれゴブリンであれ、余所者がエニヤに長いあいだ留まることを許さなかった。永住などもっての他である。この楽園を見ることができるのはごく一握りの限られた者達で、それは主にエルフと商売をするノーム国や人間国の商人であり、またエルフの国と友好関係を築き、戦時には同盟を結びたいと望む近隣諸国の使節団であった。
 そのような使節団のひとつが訪問した際に、真っ当なエルフからすればとても信じられない出来事が起こった。宮殿のそばに居をかまえられるほど高貴な身分であったエルフの家系の若い娘が、人間国の大使に同行していた美しくて逞しい騎士に狂おしく恋をしてしまったのだ。その若い騎士もまた、エルフの中でもずば抜けていた彼女のこの世ならぬ美しさに魅了され、禁忌と知りつつも彼女との逢瀬を重ねた。
 使節団の滞在期間が終了すると、恋人達の心が張り裂けようとも、人間の騎士はエルフの娘と別れてエニヤを去らざるを得なかった。それから時が満ち、エルフの娘は男児を生んだ。誰が父親なのかは一目瞭然であった。
 激怒するエルフの王から幼いハーフエルフを庇ったのは、宮殿つきの魔法使いであり王の相談役でもあるイルディスだった。イルディスはこの幼子に魔法使いとしての天賦の才を見出し、情けをかけるよう王に訴えた。エニヤの地で自ら魔法を教えたかったのだ。それはエルフの掟に反していたが、己も娘を授かった直後で気が和らいでいた王は、イルディスの提案を遂に受け入れた。けれどもエルフの禁忌を破りエルフならざる者と結ばれた娘は、エルフの掟に従って王国から追放された。
 エルフと人間の混血であるその幼子はデズモンドと名付けられ、宮殿のそばに住まいを与えられた。成長し、魔法を学び始めた彼は優秀な成績を修めた。小さい頃からアラティエリ王女は彼の遊び仲間だったが、若いハーフエルフと美しい王女の友情は、彼らの成長に伴ってより強い別の感情へと形を変えつつあった。後継者となる孫に汚れた人間の血が混ざりかねない。その可能性を危惧した王が彼らふたりに向けるまなざしは、日に日に険しくなっていった。かくしてデズモンドは、監視下に置かれることになった。
 アラティエリ王女を密かに恋い慕っていたエルフの若い将校が、エニヤでは禁じられている黒魔術を執り行ったとしてハーフエルフを告訴し、王の前で中傷した。イルディスはデズモンドを取り成そうとしたが、王にとってこのたびの直訴はむしろ好都合だった。エルフの王は、ハーフエルフの魔法使いをエニヤから直ちに追放せよと命じた。デズモンドはエニヤを離れざるを得なかった。

 


まだアルバム始まってません。

Эпидемия(Epidemia)/エルフの手記:はじめにお読みください

Evoken Fest 2019で来日してくださって本当にありがとうЭпидемия。

感謝の気持ちを込めて、
彼らの代表作であるメタルオペラシリーズを今度こそ完訳したいと思います。
(実は旧ブログにて、3作目の「エニヤの宝」半ばで力尽きた過去あり)
2作目までは歌詞もシナリオも完訳し旧ブログに公開済みで、
そちらで内容を把握されたという日本のファンもいらっしゃるようで、
100%自分が好きだからやってただけの翻訳班としては
光栄の極みなのですが、
過去訳も一からまるっと推敲し直しますので、
旧ブログで既にお読みになられている方も
また読み返していただけたら幸いです。

いやほんと……過去訳読み返すの自分でつらいんですよ……新訳のほう読んで……。


本編開始の前にいくつか語らせてください。だいたい旧ブログからコピペです。


まずはЭпидемия(Epidemia、エピデミア、エピジェ―ミャ)について少々。

wikiの一行目をそのまま訳すと、
「エピジェーミヤは1993年にギタリストのユーリー・メリソフによって結成されたロシアのパワーメタルバンドであり、ハイ・ファンタジーのメタルオペラシリーズで知られている。」です。
(ハイ・ファンタジーとは:現実の世界ではなく架空の異世界を舞台にしたファンタジー作品のことです)

メタルオペラはギターやら作詞やらいろいろ多才なリーダーのユーリー・メリソフさんの長年の夢だったそうで。
(長年の夢、と言っても1作目「エルフの手記」の2004年当時はまだ30歳。若っ!)
元はファンタジー小説ドラゴンランス」をテーマにするはずが、
執筆するうちにほぼオリジナルになっちゃったとのこと。
あーこれ書いた人ドラゴンランス大好きなんだなー、程度です。

2018年にメリソフさんにインタビューされたすごいメタラーさんの記事も必読です!
http://blog.livedoor.jp/prprprprprpr/archives/9358267.html


露和翻訳が生きがいとはいえ所詮素人翻訳につき、以下に必要最低限の注意事項を。

・2004年から2018年まで、
 現時点で全4作リリースされているメタルオペラシリーズですが、
 各アルバムにもれなく長文シナリオがついてくるため、
 歌詞だけ読んでも内容は正直言ってよくわかりません。
・ゲストボーカルも多数出演されているので「そもそもお前は何役なんだよ?」ってなります。
 当ブログの掲載順どおり、
 1作目「エルフの手記」オープニングのインストゥルメンタル
「黄金の竜」に掲載する「前史」からお読みください。
・「エルフの手記」のシナリオ原文は改行一切なしなのですが、
 それだと大変読みづらいので翻訳は適当に改行しました。
・例えば主人公のハーフエルフの名前「Дезмонд」を
 できる限り正確にカタカナ表記すると「ヂェーズマント」になりますが、
 日本人にも馴染みやすいよう「デズモンド」としています。他のキャラもしかり。
・登場人物の表記がころころ変わるのは原文がそういう仕様だからです。
(例:デズモンド、ハーフエルフ、新米の魔法使い、若い魔法使い、など)
 重複を避け変化をつけようとするのはロシア語の特徴のひとつなのですが、
 さすがにこれは日本人にはわかりにくいだろうと思われる箇所は適当に統一させています。
・元々直訳ができないたちなもので意訳だらけではあるものの、
 無意識で力不足の誤訳ならともかく、
 ロシア語原詩や原文をないがしろにする訳を故意に捏造することは
 当ブログでは絶対にありえません。

 

「以上の点を踏まえた上で、
 エピジェさんの傑作「エルフの手記」を日本語対訳つきでお楽しみいただければ是、幸い至極。
 ひとりでも多くのメタラーさんに見てもらえたらいいなあ。」って、
旧ブログで2013年の私が言ってたの見ちゃって泣きそう。その夢ちゃんと叶ったよ。

 

私情はこの辺で切り上げるとして、
次の記事から「エルフの手記」が始まります。

Evoken Fest 2019 : Эпидемия(Epidemia)7/7 Выбор есть!(選択肢はある)

Evoken Fest 2019、9月1日吉祥寺CLUB SEATA公演のЭпидемия(Epidemia)のセットリストを訳しています。

今日こそEvoken Fest 2019のЭпидемия(Epidemia)ラストの7曲目、
「Выбор есть!(選択肢はある!)」です。
昨日対訳付きで紹介させていただいた
「Дует ветер ледяной(氷の風が吹く)」の後日談です。 

gravetreeru.hatenablog.com

  (メタルオペラシリーズの4作目である2018年のアルバム、
「Легенда Ксентарона (クセンタロンの伝説)」に収録。
内容としてこの曲の前に「Дует ветер ледяной(氷の風が吹く)」が来るため、
フェス演奏曲ではありませんがそちらを先に紹介させていただきました。)

 

2018年にリリースされたばかりのメタルオペラシリーズの4作目、
「Легенда Ксентарона (クセンタロンの伝説)」のあらすじをざっくりと。

1作目ラスボス、2作目で仲間入り、
3作目では一旦退場し出番そのものがなかった、
クセンタロンの闇の君主デイモスさんがいきなり主役に躍り出ます。
実はエニヤ出身のありふれたエルフだった彼が、
いかにして闇落ちしクセンタロンの君主となったのか、
その経緯がアルバム前半で語られ、
後半では3作目の「エニヤの宝」で張り巡らされた伏線が回収されていく感じです。

鉢合わせてしまった氷竜ミチェーリをエニヤにだけは行かせまいと、
己も忠実な部下も犠牲にしてまでエニヤに通じる門を閉じて、
エニヤとクセンタロンの狭間に位置する空間で凍え死に、
数百年ものあいだ氷像と化していたボタル=エリを、
黄金の竜ギルティアスが図らずも蘇生させてしまうのです。
(前作のボタル=エリさんについても
 上記の「Дует ветер ледяной(氷の風が吹く)」を参考にしてください)

 

以下の映像だけ見ると
「眠れる戦士をギルティアスが呼び覚まし、
 新たなる戦にて共に戦わんと説き伏せた」風なんですが、
実際のギルティアスは、
「あっなんかこいつ過去にがっつり功績残してんだけどめんどいやつだ。
 君もうやるだけやりきったからおとなしく引退してくれないかなー。
 ……引退してくれないかまあそりゃそうだよねー。
 でもすごい嫌な予感がするんだよ……できれば関わりたくない……」と、
ボタル=エリさん参戦に難色を示しているのです。

 

Эпидемия - Выбор есть!
Epidemia Эпидемия - Выбор есть!  - 選択肢はある!


Эпидемия - Выбор Есть! (official video - премьера)

 

ボタル=エリ:
うつつか夢か
永遠か束の間か
時は止まった
私は誰だ?
誰の顔なのか
凍った鏡に映るのは?

覚えている 渦巻く吹雪と
獣の咆哮を
頭上で空が閉じていった…

ギルティアス:
立ち上がれ 英雄よ
運命はごく稀に二度目の機会を与える
私と共に行こう
栄光と安息がお前を待っている

ボタル=エリ:
馬鹿を言うな! 戦いは終わっていない
敵を倒せていないのだ
強大なままであれ
部下達の犠牲を
忘れられない
許せるわけがない…

ギルティアス:
果たして復讐心は
彼が新たな戦に加わる動機となりうるのか

ボタル=エリ:
選択肢はある
戦場で運命を見届けるか 氷の下で眠るか

ギルティアス:
かくも恐ろしきミチェーリよ
クセンタロンの地に混沌をもたらした!
お前は義務を果たしている
既にやり遂げたのだ
これはお前が加わるべき戦ではない!

ボタル=エリ:
馬鹿を言うな! 戦いは終わっていない
敵を倒せていないのだ
強大なままであれ
世界には数多の地があるが
両国は密接に結びついている
誰かが犠牲を払わねばならない

ギルティアス:
果たして復讐心は…


Ботар-эль:
Явь или сон?
Век или миг?
Остановилось время.
Кто я такой?
Чей это лик
В зеркале ледяном?

Я помню снежный вихрь,
Звериный вой -
Сомкнулось небо надо мной...

Гилтиас:
Вставай, герой,
Судьба не часто дарит нам шанс второй
Летим со мной
Туда где ждут тебя почёт и покой

Ботар-эль:
Ни за что! Бой не окончен,
Враг не побеждён.
Пусть он силён.
Гибель моих войнов
Не могу забыть,
Не могу простить...

Гилтиас:
Но разве может месть
Служить мотивом для героя?
В новой битве.

Ботар-эль:
Выбор есть -
Узреть судьбу на поле боя
Или лежать подо льдом.

Гилтиас:
Метель страшна.
На Ксентароне сеет хаос она!
Свой долг сполна
Ты отдал -
Это больше не твоя война!

Ботар-эль:
Ни за что! Бой не окончен,
Враг не побеждён,
Пусть он силён.
В мире много места,
Но двоим в нём тесно -
Кто-то должен пасть.

Гилтиас:
Но разве может месть...